ステッピングモータを速度を変えながら回すと、妙なことが起きる。ゆっくり回すと安定、思い切って速くしても滑らか。ところがその中間のどこかに、振動と唸りがひどくなる帯域がある。運が悪いと脱調——ステップを取りこぼして位置を見失う。
なぜ「中間だけ」なのか。
ロータはバネに繋がれた振り子である
ステッパのロータは、磁気的な「バネ」で目標位置に引かれている。1ステップ進めという指令は、バネの根元を少し先へ動かす操作だ。ロータはバネに引かれて追いかけ、目標を少し行き過ぎ、戻り——つまり減衰振動しながら整定する。
バネ(磁気剛性)と慣性(ロータ+負荷)があるのだから、固有振動数 を持つ。典型的な小型モータで数十〜百数十Hz。
ステップ周波数が固有振動数とぶつかるとき
1ステップごとにロータは小さく「弾かれる」。この加振が毎秒何回来るかがステップ周波数だ。
- 低速: 加振の間隔が長く、各ステップの振動は次が来る前に減衰しきる。静か。
- 共振帯: ステップ周波数(またはその分数調波)が に重なると、前の振動が消えないうちに次のキックが同位相で来る。ブランコを漕ぐのと同じで、振幅が育つ。最悪、振れ幅がステップ角を超えて脱調する。
- 高速: 加振が速すぎてロータの機械系が追従できない。個々のキックは慣性に均されて、むしろ滑らかに回る。
「中間だけ暴れる」のは、そこが共振条件の交差点だからだ。
対策はどれも「共振の教科書」どおり
- 加振を小さくする: マイクロステップ。1回のキックを 1/16, 1/256 と細かくすれば、注入されるエネルギーが減る。
- 減衰を増やす: ドライバの電流制御(decay モードの調整)や、機械側のダンパ。
- 共振帯を使わない: 台形加速で共振帯を素早く通過する。滞在時間が短ければ振幅は育たない。
- 帯域そのものをずらす: 負荷慣性が変わると も動く。装置に組み込んだ後の共振帯は、モータ単体のカタログ値とは別物になる——実測が要るのはこのためだ。
開ループの宿命として
ステッパの共振は、フィードバックなしで位置を保証するという設計思想の代償でもある。バネで引きずる以上、バネの物理からは逃げられない。逆に言えば、暴れる帯域は「そのシステムの固有振動数を教えてくれる測定器」でもある。振動が最大になる速度からロータ系の を逆算できる——厄介者は、視点を変えるとだいたい計測器になる。